海洋事業部

大型LNG船タンク防熱工事から、船内の防火・防熱工事、木ライナー工事に至るまで
冷凍冷蔵エンジニアリングで培われた技術を駆使し、様々な工事を行っております。
  海洋事業部で主に実施している工事をご紹介いたします。

 
 
 
 
 
 

タンク防熱工事

LNG船・LPG船
LNG船タンクの代表的な3つのタイプ

一口にLNGタンカーと言っても、タンクの形状、防熱方法によって色々なタイプがありますが、世界で最も一般的なタイプは下記の4タイプです。
イノクリートは、4タイプすべてに施工実績があります。

球形タンク モス方式

モス方式はアルミニウム製の球形タンクの周りをプラスチックフォームで防熱します。
球形タンクは、タンクの赤道部を円筒形のスカートで支持し、これを通して荷重を船体で受けるという構造をしています。
タンクが球形であることから、構造解析が簡単、タンク容積当たりの表面積が最小で外部断熱であるため、ボイルオフ率低減が容易、スロッシング衝撃圧が小さい、衝突座礁時の安全性が高い等の特徴を持ちます。

タンク防熱施工方法

施工風景

防熱施工方法の詳細
(スパイラル工法)

メンブレン GTTマークIII

メンブレン GTTマークIII方式は一次防熱壁に厚さ1.2mmのステンレス鋼薄膜を使用し、LNGの熱変動と航海中の船体変形による収縮をコルゲーションが吸収するようになっています。防熱層にはガラス繊維補強ポリウレタンフォームを採用し、さらに二次防熱壁にガラス繊維とアルミ箔の複合材を使用して安全性を高めています。

メンブレン GTTマークIII方式は球形に比べてスペース効率が良いので、同じ大きさの船でも球形に比べタンク容量を約18%増大させる事ができます。

タンクの防熱構造

タンク内部

タンク防熱工事の流れ

●パネル工場(この工事のためだけに工場を造りました)

●完成パネル(このようなパネルを約2700個作りました)

●パネル取付(機械も活躍しました)

●メンブレン溶接(造船所の仕事です)

メンブレン GTT NO96

メンブレン GTT NO96方式は一次防熱壁に熱収縮が殆ど無い、厚さ0.7mmのインバー鋼(36%Ni鋼薄膜)を使用し、防熱としては発泡パーライトが詰められた合板製の防熱箱を”煉瓦積”することにより行います。メンブレンがフラットなため溶接がしやすく、また防熱材ユニットの形状構造がシンプルなため、施工性が良く、大型化に対応しやすい特徴があります。

メンブレン GTT NO96方式は球形に比べてスペース効率が良いので、同じ大きさの船でも球形に比べてタンク容量を約15%増大させる事が出来ます。

タンクの防熱構造

タンク内部

LNG船防熱/メンブレン施工の流れ

●防熱箱(このような防熱箱を約51,000個使用しました)

●接着剤塗布(工場に見えますが船内です)

●防熱箱取付(メンブレン GTTマークIIIと異なり防熱箱が小さいので取付は人力です)

●インバー溶接(造船所の仕事です)

方形タンク SPB方式

SPB(Self-supporting Prismatic shape IMO type B)方式は、タンク本体(一次防壁)・保冷および支持台で構成され、船体から独立した構造をしています。

SPBタンクは、①強固で信頼性の高いタンク構造、②任意液位でスロッシングが発生しない、③タンク形状の自由度が高いという特徴があります。

SPBタンクは外部防熱方式では、防熱材に荷重がかからないため、一般的な硬質ウレタンフォームが使用されています。

LNGの基礎知識

天然ガスとは

天然ガスとは、油田地帯・ガス田地帯から産出するメタンを主成分とする無色・無臭で高カロリーな可燃性ガスです。空気より軽いので、万が一漏れても低い所にたまらず、自然発火温度が他燃料と比較して高いこと等から安全性が高く、燃えても地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量が石炭や石油に比べて30~40%も少ないクリーンなエネルギーです。

LNGとは

LNGとは、離れた油田から天然ガスを効率よく輸送、貯蔵するために、天然ガスを超低温(-162℃)に冷却し、液化した物です。

天然ガスの輸送方法としては、世界的に観ると、パイプラインが主流ですが、日本のように周囲を海で囲まれた島国で輸入に頼る国では、LNGタンカーによる輸送がほとんどです。天然ガスは液体になると、気体の状態と比べて体積が約600分の1になり、一度に大量に運ぶことが出来ます。LNGタンカーのタンクは-162℃の温度を保つ魔法瓶のような働きを持ち、極低温と空荷の時との温度差に耐えうる構造が要求されます。

そのため、LNGタンカーにとって最も重要な生命線となる防熱施工は、厳しい品質管理と高い技術力が要求される仕事です。

LPGとは

LPGは、「Liquefied Petroleum Gas(液化石油ガス)」の頭文字をとった略称で、プロパンやブタンなどの加圧・冷却によって簡単に液化しやすいガスの総称です。 液化すると体積は気体の1/250になります。 主成分がプロパンの場合はプロパンガス、ブタンの場合はブタンガスと呼ばれます。 石油の精製や天然ガソリン製造の副産物として得られます。 家庭や工業で利用されます。

ケミカルタンカー

ケミカルタンカーは、液体の化学物質を運ぶための船です。
主に石油化学製品(メタノール、エチレングリコール 等)や非石油化学製品(リン酸、硫酸、パーム油、苛性ソーダ、アンモニア 等)を運びます。
通常複数に分けられたタンクを持ち、タンクには特別なコーティングが施されていたり、ステンレス鋼で製造されたタンクを使用したりします。
コーティングやタンクの材質によって、そのタンクで運ぶことができる積み荷の種類が決定されます。
タンクの形状やサイズも様々で、船ごとに必要な防熱仕様も異なります。ウレタン吹付工法、ウレタン吹付・注入工法、防熱パネル工法など、イノクリートでは様々なケミカルタンクの防熱施工の実績があります。

ケミカルタンク防熱施工の流れ

●ウレタンフォーム吹き付け

●ウレタンフォーム吹き付け後

●防湿材吹き付け

冷凍運搬船

戦後の混乱からの復興、高度成長時代と日本の食料消費が増える中で、海外からの果物・肉・魚類の大量輸送が始まりました。それを担う冷凍運搬船の防熱施工を支えたのはイノクリートの技術です。

概要

冷凍運搬船(リーファー/REEFER)の定義としては、「貨物を、その品質保持に最適な環境に保ち、運搬する船」といえるでしょう。

ここで言う環境とは、温湿度条件と新鮮空気等の通気です。

又、その貨物としては、冷凍品(肉、魚など冷凍された食品及び加工品)や青果物類があり、それぞれに適した保持温度、環境条件にて運搬されています。

上記の最適環境を作り出すため、貨物艙内(ホールド/HOLD)は冷凍機器により空調されており、その時その冷凍機器運転に経済性を持たせ最適環境を保持し、又、船体鋼板が冷却され破壊を起こさないため貨物艙を防熱することになります。この貨物艙防熱工事が他の防熱工事(陸上冷蔵倉庫、プラント設備保温・保冷、住宅建物の断熱)と異なる点が2つあると考えられます。

まず1点目は、運搬と言う作業を伴うことにより艙内に運搬・荷役に必要な装置が設置されていることであり、もう1点は、防熱層が船体という鋼板に囲まれているということです。

この冷凍運搬船の特徴である2点がその防熱工事を他種の防熱工事に比べ、より装置として位置付け出来るものであり、又、逆に簡単にしている点でもあるでしょう。

運搬品目

現在、冷凍運搬船は世界中の海を走っています。特に、日本の食料品は大部分を海外からの輸入に頼っており多くの青果類、肉、魚類を運んでいます。

では、具体的になにを運んでいるのでしょうか。

超低温 (-30℃~-60℃)
マグロ
低温 (-30℃以上)
牛肉、豚肉、鶏肉、一次加工食品
チルド (0℃~-4℃)
オレンジ、リンゴ、グレープフルーツ、キューウィ、パイナップル
ほうれん草、カリフラワー、タマネギ、完熟トマト、アスパラガス
0℃以上 (0℃~+15℃)
レモン、ジャガイモ、トマト(緑熟)、キュウリ
(+12℃~+14℃)
バナナ

このように運搬するものによって温度帯が違います。これは、鮮度を一番保てる環境が品物によって異なるからです。特に、マグロは-50度以下にする必要があり,これを運搬する船を超低温船と呼んで区別しています。

また、「青果類は収穫後もいきている」と言う言葉通り、青果類は収穫後も呼吸しており、ほっておくと腐ってしまいます。そこで、空気中の酸素を減らして、二酸化炭素を増やすことによって、長期間の保存が可能になりました。これを、CA貯蔵と呼びます。

これによって、貨物艙全体をCA貯蔵することで、冷凍運搬船での遠距離間の大量輸送を可能にしました。

艙内装備

青果類や野菜を大量に運ぶ冷凍運搬船の艙内はどのようになっているのでしょうか。
船の特徴として、艙内に運搬・荷役の装置が施されています。

上甲板ハッチカバー

冷凍・冷蔵倉庫の可動式の蓋。蓋の中には防熱材が詰まっています。

下甲板ハッチカバー

各デッキ(階)を区切る可動式の蓋。上から下のデッキの荷物を出し入れするときに開きます。
仕様によっては防熱のない物もあります。

クーラー室

艙内の温度を保つのに最も重要なところです。

風路グレーチング

クーラー室から出てきた冷気が床にある風路を通って艙内を床から均一に冷やします。

 
 

木ライナー工事

IMO type Cタンクを船舶のタンクサドル上に設置する為の調整材(木ライナー)を取り付ける工事です。
耐久性と耐水性に優れた広葉樹のアピトンや高強度なブナ材にフェノール樹脂含侵したものなど、タンクの仕様に合わせて加工し、敷設または専用のマスチック材を用いて接着を行います。

木ライナー施工の流れ

●木ライナー設置前の構台の状況

●タンク下に木ライナーを敷き込み

●タンクサドルFIX側(手前)に
接着剤(マスチック材)塗布

●タンク設置の為、揚重中

 
 

配管保温工事

船には様々な配管があります。保冷の必要な配管に対してウレタンボード断熱材硬質ウレタンカバーで保冷し、FRPまたはメタルジャケットで保護します。
FRPとは、繊維強化プラスチックの略で、強化繊維(ガラス繊維・カーボン繊維など)と樹脂(不飽和ポリエステル樹脂・ビニルエステル樹脂・エポキシ樹脂など)を組み合わせた複合材料のことです。軽くて強度・耐食性・成形性に優れます。小型船舶の船体、航空機の機材、浴槽、波板、保安帽などに用いられます。

配管保温施工の流れ

●配管に硬質ウレタンカバー取り付け

●硬質ウレタンカバーにFRPライニング

●FRPライニング(基材ガラス繊維にFRP樹脂含侵)

●硬質ウレタンカバー、目地接着完了

●配管端末処理(防食テープ巻き付け)

 
 

居住区・機関部 防火・防熱・遮音工事

居住区・機関部などの防火・防熱・遮音が必要な場所にロックウールを貼り付ける工事です。ロックウールとは玄武岩、鉄炉スラグなどに石灰などを混合し、高温で溶解し生成される人造鉱物繊維です。ロックウールは安全性の高い素材で、断熱性・耐火性・吸音性に優れ、船舶や建築物などの断熱材として広く用いられています。船上の火災は生死に関わる大事故につながる可能性が高いため、防火工事は重要な工事です。
壁、天井にインサルピンを取り付けて、ロックウールを固定して仕上げます。

防火・防熱・遮音(ロックウール)施工の流れ

●陸上でブロック化した船体にインサルピンを取り付け

●ロックウールを取り付け後の完成

●ロックウールを取り付け後の完成

 
 

糧食冷蔵庫工事

糧食用として船の中に冷蔵庫を設置する工事です。この糧食冷蔵庫は航海中の船員の食材を保管するところになります。床・壁・天井を断熱パネルで囲い、床面の樹脂スノコ、防熱扉、棚を設置し、さらに冷却設備(別途工事)・照明(別途工事)等を設置して糧食冷蔵庫内の温度を一定に保ちます。

糧食冷蔵庫の施工

●糧食冷蔵庫の内観

●糧食冷蔵庫の外観

●糧食冷蔵庫の防熱建具

冷凍冷蔵エンジニアリングで豊かな未来世界へ。